ママの手料理 Ⅱ
「いやー、あの時急に笑顔になって敬語使い始めたからこれは何かあるなと思ったんですよ!そしたら般若みたいな顔して暴言の嵐…!くーっ、心に刺さりました!」


興奮気味に話す彼女の声を聞きながら、俺はふっと片頬を歪めた。


「…そりゃどうも」


(般若、か…)


信号に引っかかり、ブレーキを踏みながら俺は胸にごちる。


般若のようになってしまうのも仕方ない、何故なら、mirageの全員が紫苑の帰りを待っているのだから。


「絶対見つけ出してやる、待ってろよ…」


俺達は家族なんだから、死ぬ気で彼女の居場所を探すのは当然だ。


「やっぱりそういう所も格好良いですよ琥珀さん…!」


外部で唯一、俺が怪盗mirageだという事実を知っている中森のキラキラした視線を左半身に受けながら、俺は大きく息を吐いた。








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同じ頃。



紫苑ちゃんについて話を聞きにみらい養護園に訪れた俺ー伊藤 大也ーと銀子ちゃんは、園の園長である副島(そえじま)先生から厚い接待を受けていた。


「あらー、久しぶりじゃないの大也、銀河!2人共まだ一緒に生活してたのね!さあさあ上がって!」


「あ、どーもどーも」


俺も銀子ちゃんもこの園では10年以上も世話になった為、敬語なんて使わなくても許される。
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