ママの手料理 Ⅱ
最も、園の関係者は誰1人俺達が怪盗mirageとして盗みを働いている事は知らないから、そこを隠せば心配する事は何も無かった。


先生の先導で応接室に向かった俺達は、彼女と向かい合わせになる形で腰を下ろした。


数年ぶりに見る彼女は幾分老けた様な気がして、髪の毛も俺と同じ雪の色に変わりつつある。


「それで、今日はどうしたの?またこの間の続き?」


お茶…ではなく、俺達が園に居た時に好んで飲んでいたオレンジジュースが机の上に置かれる。


「そうなの、紫苑ちゃんの事でお話が…」


「あいつからまだ連絡は来てねぇのか」


俺の言葉を遮り、銀子ちゃんがいきなり本題に触れた。


(うーわ、俺が言いたかったとこ取ったこいつ!)


去年ショッピングモールに買い物に行った時といい、今回といい、俺達2人は何かと一緒に行動する事が多くなっていた。


まあ、一緒に過ごしていてあまり嫌な雰囲気にはならないからいいのだけれど。



「連絡、来てないのよ。5年前に此処を出て以来、彼女はたまに会いに来てくれたり連絡を取ったりしていたんだけどね…。今年に入ってからはさっぱり」


先生は、残念そうな顔で首を振った。


「そっかあ、」


俺は肩を落とし、声をしぼませた。


彼女が消息不明になってから、もう3ヶ月が経つ。
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