ママの手料理 Ⅱ
正直、琥珀や他の皆が伊織の事をどう思っているのかは分からない。


琥珀は未だに裏切り者で加害者でもある彼を許していないだろうし、他の皆も彼に対して決して良い感情は持っていないだろう。


紫苑ちゃんに関しては首を怪我させられたわけで、もう俺達が元のような関係に戻るのは難しいのかもしれない。



それでも、受け入れる事が出来なくても理解はしてあげたい。


俺が紫苑ちゃんに琥珀が好きだと打ち明けた時、彼女は困惑しながらも理解を示してくれた。


あの時、俺は心から救われた気持ちになれたから。


現在進行形で刑務所に入っている伊織も、光の見えないトンネルの中に閉じ込められているような思いをしている事だろう。


彼が出所した時、少しでも俺が感じたような気持ちを味わってくれればそれで良い。




「難しいね…」


「は?お前何言ってんの」


紫苑ちゃんが見せてくれたにこちゃんマークのついたマカロンを眺めながら、俺はつい独り言を漏らしていたらしく。


友達でもあり恋人でもあるパソコンを片手に店に現れた笹山 銀河(ささやま ぎんが)に怪訝な顔をされた。


「いや、ほらこのマカロン難しそうな顔してるなって!この顔目が笑ってないじゃんね、まるで航海みたいで」


「酷いですね大也さん、丸聞こえですよ」
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