ママの手料理 Ⅱ
物騒な事を感慨深げに語る先生に、銀子ちゃんが牙をむく。


そんな彼の豹変ぶりを見ても、扱いに慣れている先生は物怖じ1つしなかった。


「はいはい。…取り敢えず、紫苑ちゃんから何か連絡があればすぐに伝えるから。…行方不明、だったかしら?でも行動力のあるあの子の事だから、絶対に大丈夫よ」


俺達よりも長い時間を共にした彼女だからこそ言えるその言葉に、俺達は頷く事しか出来なかった。


「…だよな、俺らもあいつを信じてる」







誰も口にしなかった。





彼女が悪い人に捕まって、もう亡くなってしまっているかもしれない、なんていう最悪の可能性を。





「今日も収穫はなし、か……」


銀子ちゃんと車に戻る最中、俺はぽつりと呟いた。



もう3ヶ月だ。


きっと、誰も口に出さないだけで、その最悪の可能性も考えているはず。


それでも、俺達のリーダーであり父親の立場にいる湊が、その言葉を断固拒否したから。


それに奮い立たされた俺達は、絶対に諦めないと誓って彼女の手掛かりを探し続けている。



「しかも、元々紫苑ちゃんと出会ったの俺だし…絶対俺が見つけてあげたい」


あの公園で彼女と出会わなかったら、こんなにスリル満点な復讐劇をして、まるで冒険みたいな生活は送ることが出来なかったから。
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