ママの手料理 Ⅱ
「あ、いらっしゃいませー」



マカロンのお店、“ママの手料理”が開店してから数時間が経過した。


もうお昼時で、カウンター席やテーブル席には何人かの女子大生と見られる若者が購入したばかりのマカロンを口にしている。


(あー美味しそ、)


そんな彼女達を横目で見て、思わずショーケースに並んだマカロンを取って食べたい衝動を必死で押さえ込みながら、俺はあくまでも店員として勤務していた。


「…すみません、こういうキャラクターもののマカロンって置いてますか?」


「ああ、そちらでしたら…」


ドアの近くでは、完璧なまでの営業スマイルを貼り付けた湊がしっかりと接客をしていて。


「俺絶対こういうの向いてないって……パソコン弄ってないで銀子ちゃんも手伝ってよ…」


レジ打ちを任されていた俺は、思わずカウンター席でパソコンと睨めっこしている銀子ちゃんに愚痴を吐いた。


「俺も今やる事あるから無理だ。…レジ打ちなんて値段入力しとけば終わりだろ、簡単簡単」


彼の言う“やる事”とは、果たしてパソコンで女の人のエロい画像を見る事で合っているだろうか。


(下心丸出しじゃんあのハッカー…何なんだよもう…)


彼のパソコンの画面が丸見えだ、もう気分も悪くなってくる。
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