ママの手料理 Ⅱ

連絡手段

チリンチリン………



「どうなさいましたか、0114番様」


「…トイレ、行きたい」



もう、どのくらいこの部屋で過ごしているか分からない。


食べて、外のバスのアナウンスを聞いて、0823番と話して、トイレに行って、お風呂に行って、寝る。


そんな、何の変哲も面白みもない毎日。


大叔母さんのくれる飴のおかげで、頭が痛くなる頻度は劇的に減った。


というより、私がただ単に色々な事を疑問に思わなくなっただけかもしれない。


ずっと頭がぼーっとしていて集中出来なくて、熱を出す以前の事は0823番が教えてくれた事しか覚えていない。


早く1人前の下僕になりたいのに。


そう思っても、何も出来ることがなかった。




「それでは、鎖を外させて頂きます。…こちらのアイマスクをお付けください」


私は言われた通りにアイマスクを着け、左手首が自由になるのを感じた。


「私の腕におつかまり下さい。…真っ直ぐに進んで下さい」


0823番の腕を掴み、ゆっくりと廊下らしき所を進んで行く。


左右の部屋からは、誰かのくぐもった声が聞こえ続いていた。



「…では、帰りましょうか。目隠しをお願い致します」


トイレが済んだ私は、慣れた手つきで目隠しをしてまた歩き出した。


こんな暗闇でも、彼女がいるから何の心配も要らない。
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