ママの手料理 Ⅱ
謎にテンションが高くなった俺は布巾をテーブルに置き、そこに置かれた紙ナプキンを1枚手に取った。


見ててね、と言い、持っていたボールペンで数字を書いていく。



104 2525



「どういう語呂合わせ?」


湊に聞かれないように、レジのカウンターから身を乗り出した紫苑ちゃんが小声で尋ねてくる。


「これね、104 2525(天使 にこにこ)っていう語呂なの!やばくない?めっちゃ覚えやすくない?」


溜めに溜めて、ドヤ顔でそう伝えると。


数秒間ぽかんと口を開けていた彼女は、次の瞬間吹き出した。


「だから、何かあったらここに電話していいよ!お店でNo.1のホスト出して下さいって言えば俺出れるから!」


釣られて笑いながら付け加えると、


「確かに覚えやすいけど、絶対何があっても電話しないからっ…!」


笑い上戸な彼女は、カウンターに頬杖をついて顔を覆いながらそう返してきた。


その後、笑顔で殺気を放つ湊に俺がみっちり叱られたのは言うまでもない。




「ちょっとパパの手料理行ってくるね!仁さん困ってたら手伝ってくる!」


それからまた数時間が経った。


おやつの時間が過ぎたからか、客足も数十分前よりは遠のき始めている。


あれからレジ打ちを俺と交互に行っていた紫苑ちゃんが、欠伸をして立ち上がった。
< 9 / 273 >

この作品をシェア

pagetop