LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
「あの、なんでそんなに行きたくないのですか?」
先程の話の続きを、訊く。
「辻丸食品の営業部長女性なんだけど、凄く一枝君の事狙ってるんだよねぇ。
きっと、今日もなんで一枝君が来ないのか?とか、色々訊かれるだろうし。
そういうの、だるいの」
そっかぁ。
それは、だるいかもしれない。
それに、聞いてる感じ、その女性に会いたくないから、一枝さんは永倉副社長にこの仕事を押し付けるのだろうから。
「あの、一枝さんって、社長の事ですよね?」
我が社の社長であり、ブルークローバーグループ会長の名前は、
岡崎一枝(おかざきひとえ)。
「そう」
「社長と仲良いんですね?」
そうやって、君付けで呼ぶくらいだから。
「あのさ、俺と一枝君との関係知らない?
誰かから聞いてない?」
そう言われ、どうしようか、と思いながら口にする。
「社長と永倉副社長は、遠い親戚だとか…」
親戚だから、岡崎社長が創業したこの会社で、
この人が若くで副社長の任に就いているのだと誰かから聞いた。
「それ以上にない?」
「でも、実は…本当は二人は兄弟で」
そう。
実は二人は親戚でもあり、実の兄弟。
「そう。一枝君、二十歳の時、母方の親戚の養子になって。
だから、俺と名字も違うの」
「そうなのですね…」
そう返すと、クスリと永倉副社長は笑っていて。
その笑みは、いつもの天使のような笑みじゃなくて。
「ほら、うちの父親がヤクザで組長とかやってて。
一枝君、大学在学中から飲食ビジネス始めたのだけど。
この会社の始まりのそのダイニングバーの経営が上手く行き出して会社にする際、経営者がヤクザの息子だとあまり良くないから、一枝君はそうやって母方の親戚の養子になって。
当時、何もそこまでしなくても、って俺は思っていたけど。
結果として、これ程の大きな会社になって。
その決断は間違ってなかったんだよね」
今現在、ブルークローバーグループの世間での知名度はわりとあり、会社を知らなくても、わが社が経営している、[笑い鳥]は大半の人が知っている。