LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
「俺から聞かなくても、文乃ちゃんうちの会社居たら、俺らの事誰かから色々聞いてるでしょ?」


その言葉には、ちょっと刺が感じられた。


「そうですね…」



それは、私が永倉副社長の事を好きなのを知っているから、
周りは色々と教えてくれるのであって。


きっと、この人が思っているような感じではないと思う。


それに、岡崎社長もそうだけど、永倉副社長だって、うちの会社の社員達にとても慕われている。


「時々、文乃ちゃん俺の事見てる気がしたけど。
そうやって、何人かで噂しながら俺の事見てたんだ」


それは、誤解!


同じ部の数人で居た時にこの人が近くに居て、私に永倉副社長に話し掛けてみろ、とか周りに冷やかされた事が何回かはある。


多分、その時の事だろう。


「違います。
べつに、こそこそと永倉副社長の陰口言ってたわけじゃない!」


「そんなに必死に否定しなくても、
べつに権力使って、文乃ちゃんやその社員達も、どっかに飛ばしたりとかしないから」


なんだか、こっちが必死になればなるほど、この人は逆に冷めて行くのが分かる。



「それにしても、昨日の夜俺の誘いにあんなあっさり乗って来たのは、そんな俺に対して興味本位か何か?
それか、ただ単に文乃ちゃんが軽いの?」


違う。


あなたが好きだから、と思うけど。


そんな風に失礼な言い方されて、それは言葉にならない。



「まあ、俺も同じ会社の子喰っちゃうのもどうかな、って迷いもあったんだけど。
夕べ、会ってた女の子から直前でおあずけくらって。
それで、昨日は誰でもいいからとにかくヤりたかっただけなんだよねぇ」



"ーーちょっと、この辺りに知り合いが住んでて。
その帰りに立ちよったのーー"


この人がそう言っていたのを、思い出した。
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