LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
「私の事遊びだったんですか?」
そりゃあ、付き合おうとかの言葉は一切なかったけど。
でも…。
「本気だと思ってたの?」
そう逆に訊き返されて、言葉に詰まる。
もしかしたら、と私はそう思っていたのだと気付いて。
「俺、文乃ちゃんの事よく知らないし。
それに、ハッキリ言って、文乃ちゃん俺のタイプじゃないし。
あ、べつに世間的に文乃ちゃんは全然可愛いと思うよ!愛嬌ある顔してて。
ただ、俺は可愛いよりも、美人で出る所出て、みたいなのが好きだから」
暗に、私は美人じゃなくて、胸もないとか言いたいのだろう。
「それもそうだし、あれほどあっさり俺に体許して、その呆気なさに、なんだか、これっぽっちも文乃ちゃんに魅力を感じないんだよねぇ」
天使だとずっと思っていた、永倉副社長の本性が、これなのだろうか?
永倉副社長は、足元に落ちていたあのえんじ色のネクタイを拾う。
私の衣服と一緒に、そのネクタイもこちらの部屋へと持って来ていた。
「そうそう。このネクタイもいらないから、あげるって言ってたのに。
これ貰いもので、くれた人とはもう会う事もないから、どうでも良かったのに」
そのえんじ色のネクタイをこの人にプレゼントした人は、
なんとなく、女性のような気がした。
それは、この人の元彼女なのか、私のように遊ばれた女の子かは分からないけど。