LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
なんだか、悔しくて悔しくて。


なんでずっとあんなクソ男を好きだったのだろうか?



エレベーターホールを目指してマンションの内廊下を歩いていると。



前から人が歩いて来て。


え、岡崎社長?


もしかして、岡崎社長もこのマンションに住んでいるとか?


それより、挨拶した方がいいの?


もし、私の事なんか岡崎社長は覚えてないなら、このまま無視して通り過ぎた方がいいよね…。


こんな場所で会って、色々と面倒そうだから。


「あ、確か、公報の…西村さん?」


岡崎社長は、私の前でピタリと足を止めた。



「あ、岡崎社長。おはようございます」


今気付いたような振りをして、頭を下げる。

もしかしたら人違いであって欲しかったけど、
この人はうちのブルークローバーグループ会長兼本社社長の、岡崎一枝さん。


「あれ?西村さんもこのマンション…ではないよね?」


「…はい」


私の給料でこんなマンションに住めない。


そもそも、このタワマン分譲だろうし。



「なんでこんな場所に居るの?」


なんだか、そうやって追及されて、答えに困る。


流石に、あなたの弟の部屋に今の今迄居たなんて言えない!



「あ、社長、その手に持ってるビニール袋は、もしかして?!」


話を逸らす為に、そう話を振る。



「え、そう!朝マック。
無性に食べたくて、買って来たんだ」


その笑顔は永倉副社長によく似ていて、
この人もとても人たらしなのだけど。


先程の、この人の弟の豹変ぶりを見たばかりだから。


この笑顔にも、裏があるように思ってしまう。



「私、急いでいるので、これで失礼します」


そう頭を下げて、岡崎社長の横を走り抜けた。



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