LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
◇
「岡崎社長、何故、私なのでしょうか?」
昼休み前、社長室へと呼ばれた私は、
執務机の前に立ち、目の前の岡崎社長にそう問う。
「あ、べつに西村さんの仕事振りを期待しての指名じゃないから。
香苗女史の他にも、俺の秘書には高田が付いてくれていて、
ちょっと大変だけど、大概の事は高田一人でなんとかなると思う。
そりゃあ、残業も増えるし、大変だし、ちょっとブラックなんだけどね」
「はぁ…」
なら、何故私を?
聞いてる感じ、高田さん一人でなんとかなるみたいだし。
ブラックらしいけど。
「ほら、外出の際やはり連れて歩くのは女性秘書の方がいいからさぁ。
西村さん、わが社の女性社員で三番目くらいにイケてるから」
なに?その理由?
確かに、高田さんは男性だけど。
「ちなみに、1位はもちろん香苗女史で、2位は営業の夏村さん。
西村さんは、俺的に3位かな」
「なら、2位の夏村さんに頼まれないのですか?」
3位の私ではなく。
「夏村さんは、営業に欠かせない人物だから。
俺も泣く泣く諦めて」
なるほど。
私はそれほど広報で主力の人材ではない。
「面倒な事は全部高田にさせるから、
西村さん、俺の秘書引き受けてくれない?」
そうお願いして来る顔は、あの忌まわしき永倉副社長にソックリで。
そもそも、兄弟だから、この二人とても顔が似ている。
小柄な永倉副社長とは違い、岡崎社長はとても背が高いけど。
「私には、社長の秘書なんて務まりませんよ。
他をあたって頂けませんか?」
そう、丁重に断ろうと思う。
「仕方ないな。
なら、みー君の秘書の湯沢さんを俺の秘書にして、
西村さんを、みー君の秘書にしよう!」
ポン、と手を叩くけど。
この人の言う、みー君って…。
もしかして、永倉三咲副社長…。
三咲で、みー君?!
「それはダメです!
ぜひ、私に岡崎社長の秘書を務めさせて下さい!」
そう懇願してしまう。
だって、あの忌まわしき永倉副社長の秘書なんて、絶対にあり得ない。
「じゃあ、決まり!
明日からよろしく」
そうして、私は岡崎社長付きの秘書の一人になった。