LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
その時、社長室の扉がノックされて、
岡崎社長の返事を待たずに扉は開けられる。
「一枝君、なに?急に来いって…ゲッ、なんでお前ここに?!」
社長室に現れた永倉副社長は、
私を見るやいなや、露骨に顔を歪めた。
「あれ?みー君、文乃ちゃん知ってるの?」
「は?
べつに、ちょっと知ってるくらい」
ちょっと知ってるくらい、か。
相変わらず、言ってくれるよな。
あれから1ヶ月。
この会社で数回この人を見掛けたけど、
こうやってまともに会うのはあれ以来。
「呼んだのは、みー君に言っとこうと思って。
ほら、香苗女史が体調不良で、暫くこの文乃ちゃんにも俺の秘書を引き受けて貰ったから」
「そんなの、一々俺に言わなくても一枝君の勝手にしたらいいじゃん」
「ほら、一応、みー君にも文乃ちゃんの事紹介しとこうと思って」
「は?べつにそんな紹介いらない。
ただ、紹介された感想としては、香苗女史に比べたら、かなり見劣りするね」
そう、天使、いや、悪魔の笑みを浮かべている永倉副社長。
やっぱり、この人大嫌い!
「けど、もし、俺と文乃ちゃんとの間にさ、この先恋が芽生えたら…。
俺と文乃ちゃんが結婚なんかしたら、文乃ちゃんはみー君にとったら、お姉さんになるんだよ?
じゃあ、やはりちゃんとこうやって紹介しとかないと」
その岡崎社長の発言。
ぶっ飛び過ぎていて、逆にツッコメない。
「ああ、なるほど。
そういう事。
お前は肩書きある男なら、誰でもいいって事なんだ」
そう、永倉副社長は私を睨んでいて。
いや、ちょっと待って!と思う。
私が岡崎社長に肩書き目当てで好意を寄せてるみたいに思われているし。
それに、肩書き目当てで、あの夜この人に私がホイホイ付いて行ったのだと思っているのだろう。
誤解だけど、今さらこの人を好きだったからなんて、言いたくない。
もう、これっぽっちも、好きだとかいう気持ちないけど。
「話はそれだけ?
俺、もう会社出ないといけないから。
じゃあ、お兄さん、お姉さん、さよなら」
そう言って、永倉副社長は社長室から出て行った。