LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
「香苗女史も、こんな感じだったんだよ。
青白い顔して、急に席を立って」
「香苗さん?」
「文乃ちゃん、妊娠してない?」
妊娠…。
それに、は?と声が出そうになるけど。
思い当たる節は、ある。
それに、生理が暫く来ていない事にも気付いた。
「でも、あんな一度きりで。
それに…」
中には出してなかったはず。
「父親は、みー君?」
そう訊かれて、何も答えられない。
本当に、妊娠しているかも分からないし。
もし妊娠していても、永倉副社長が父親なのだと、兄であるこの人に言ってしまっていいのだろうか?
それに、それに…。
なんだろう?急に気持ちが不安になって、怖くなる。
「文乃ちゃん、心配しなくて大丈夫だから」
何故か、岡崎社長のその言葉に、とても安心する。
「とりあえず、今日の接待は早く切り上げよう」
そう言って、岡崎社長は私の腕を引き、
辻丸食品社長とその秘書の女性が居る個室へと戻ると、
「辻川社長、大変申し訳ないのですが、僕達はこれで失礼させて貰います。
秘書の西村の体調が思わしくなくて」
そう告げた。
「それは、大変です。
私どもの事は気にせず、早く彼女を連れて帰ってあげて下さい」
辻丸食品の社長は優しくて、私に心配そうな目を向けている。
「お心遣いありがとうございます。次は、こちらからご招待します」
そう言って、岡崎社長は出口に促すように私の腕を引き、
近くに居た店の人にタクシーの手配をして貰っていた。