LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~


「もしかしたら、文乃ちゃんのお腹の子、ふうちゃんの生まれ変わりかもしれないから」


その岡崎社長の声は、胸を締め付けられるくらい哀しさを含んでいて。


永倉副社長も、その言葉に何かを思うような表情で。



「…二葉(ふたば)君の生まれ変わりなわけないでしょ」


永倉副社長のその声も、聞いていて哀しいもので。


二人が口にした、ふうちゃんと二葉君は同じ人物で、
話を聞いている感じ、もう亡くなったのだろうか?


生まれ変わり、ってそういう意味だろうし。



「あの…その、二葉さんって誰なのでしょうか?」


その二葉さんは、この二人にとって、どういう関係?



「ふうちゃん…。永倉二葉は、俺の弟であり、みー君の兄。
俺達は、三人兄弟なんだよ。
俺が長男で、みー君が三男。
そして、ふうちゃんは次男」


そうなんだ。


岡崎社長と永倉副社長が兄弟なのは知っていたけど、
もう一人兄弟が居る事迄は知らなかった。


じゃあ、この人達は、兄弟を亡くしたのだろうか?



「一枝君、関係ない話はもう辞めて!
今は、文乃と俺がどうするかだよね?
結婚するかしないか。
俺はもうどっちでもいいから!」


永倉副社長のその態度に、私も岡崎社長も腹が立たないのは、

その二葉さんの事を、これ以上話題にしたくないこの人の気持ちが、痛い程伝わって来て。


「じゃあ、二人は結婚する方向で話進めるよ。
じゃあ、これに名前書いて。
いると思って、これダウンロードしてプリントしたから」


そう言って、岡崎社長はスーツのポケットから、
折り畳んでいる紙を取り出した。


それを開くと、婚姻届の文字が見える。



「ちょっと待って下さい!
こんな最低なクソ男と結婚なんて!
こんな人大嫌いなのに!」


その紙を見て、目の前に突き付けられた事実に今一度考えてしまった。


子供がどうとかの前に、こんな最悪な男との結婚なんてあり得ない!


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