LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~

「俺だって、お前の事なんか嫌いだし。
そんなお前と結婚なんて、本当はしたくないし!」


ある意味、私達は両思い。


お互いに、大嫌い。


「けどさ、する事しといて、責任取らないの?
お腹の子供に対して。
三咲だけじゃなくて、西村さんも。
二人ともいい大人なのに、自分達の行動にちょっと無責任過ぎない?」


そう言う岡崎社長は、いつものふざけた感じはなくて。


なんだか、説得力があるのもそうだけど、怖さも感じた。


この人に、逆らえないような。


きっと、永倉副社長もそうなのだろうと、思う。


私と同じように、口を閉ざしてしまう。


「…だから、俺はもうどっちでもいいから。
書くよ」


永倉副社長はその婚姻届を手元に寄せると、
岡崎社長からボールペンを受け取り、それに記入して行く。



「あの、私の方は少し待って貰えませんか?
親に話さないと」



よくよく考えたら、親に話してからじゃないと、こんなものに名前なんて書けない。


永倉副社長は親に話さなくてもいいのかな?と思うけど、
兄の岡崎社長が認めているなら、いいのだろうか?



「文乃ちゃんのお父さんには、さっき電話して了承貰ってる。
文乃ちゃんのお父さん、角山食品の営業部の部長なんだね。
うちと取り引きのある会社だから、スムーズだった」


うちの父親の勤める角山食品は、
ブルークローバーグループの経営するレストランに、食品を卸している。


うちの会社は、父親の働く会社からしたら、お客様。


「文乃ちゃんも、みー君の次にちゃんと名前書いてね。
これは社長命令だから」



半ば脅迫のような、その社長命令。


そんな命令断ってしまってもいいのでは、と思うけど、
断らなかったのは。


お腹に子供が居るという事実と。


迷いもなく婚姻届にしっかりと書き込まれた、
永倉副社長の名前を見たからかもしれない。


「分かりました。
印鑑は持っていないので、押せないですけど」



そう言って、その婚姻届に名前を書き込んだ。

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