LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
私は定時で仕事が終わると、
会社の近くのレディースクリニックへとやって来た。
その病院は少し込み合っていたけど、
一時間程で名前を呼ばれて、尿検査で陽性を確認し、内診でエコーをした。
「これが胎嚢で…。
ちょっと待って下さい。
これが、心臓の音です」
何かのスイッチを切り替えると、ドドド、とその音が聞こえる。
これが、私のお腹の中の子供の心臓の音。
診察台から降りた後、その男性の医師は色々と私に説明してくれた。
「現在、六週目の後半辺りで。
このまま行けば、出産予定日はこの辺りですね」
医師は、卓上のカレンダーを捲り、その日辺りを指でなぞる。
来年の1月下旬辺りかぁ…。
それは、かなり先なのだけど、来年には私は母親なのか、と思うと、
早いような気がする。
「次は二週間後くらいに」
エコー写真を貰い、そう言われた。
自宅のワンルームマンションに帰ってから、
食欲もなく、服のままベッドに寝転ぶ。
またつわりで、体調が優れない。
私のつわりは、夕方くらいからピークを迎えるのだろうか?
昨日、あれだけ気持ち悪かったのに、今朝起きたら、胸がスッキリとしていたので。
ずっと手に持ったままの、先程の病院で貰った、胎児のエコー写真を見る。
それは、まだ赤ちゃんとは言えないものなのだけど。
本当に、私のお腹に子供が居るのか、と、なんとも言えない幸福感が込み上げる。
そう言えば、私、永倉副社長の連絡先知らないまま、だな。
もし知っていたら、今日、病院に行った事を話す為に、電話を掛けたりしたかもしれない。
その前に、今日、私と永倉副社長が戸籍上、夫婦になった事だって、彼にちゃんと自分の口で報告したい。
今日、永倉副社長は朝一から何処かに出ていたみたいで、
その姿すら見ていない。
なんだか、よく分からないけど、無性に寂しくて、孤独に襲われる。
だからか、永倉副社長に会いたくて、今側に居て欲しいと思った。