LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
「ふうちゃん、そうやってプレゼントとかするタイプじゃないんだけど。
それを貰ったみー君もそうなのだけど、
お互い照れ臭そうで」
「私…あのネクタイ、てっきり女性から貰ったものだと思ってました」
"ーーこのネクタイもいらないから、あげるって言ってたのに。
これ貰いもので、くれた人とはもう会う事もないから、どうでも良かったのにーー"
三咲がそう言っていたのを思い出すと、胸がなんだか締め付けられるように苦しくなった。
もう会う事ないなんて。
「俺、文乃ちゃんのお腹の子がふうちゃんの生まれ変わりだとか余計な事を言ってしまったけど。
なんだか、文乃ちゃんの膝に巻かれたあのネクタイ見た時、ふうちゃんが教えてくれたのかな、って思って」
「教えるって、何をです?」
「もし、みー君がこの先誰か特別な女性を作るのならば、この子なんだよ、って」
二葉さんが、そうやって私を選んでくれたのだろうか…。
「だから、私はこの会社に入れたのですか?」
あの最終面接の時、時間ギリギリで私は面接会場に駆け込んで来た上に。
そうやって膝に怪我迄していて、面接官達の印象は、あまり良くなかったはずだったから。
「文乃ちゃんが採用されたのは、確かに俺が口出したからだけど。
でも、ネクタイが無くても、文乃ちゃん可愛いから採用にしてたよ」
相変わらずな感じで、そう笑っているけど。
「岡崎社長が、私と三咲の事に凄く口を挟んで来る理由が分かりました」
この人だけじゃなくて、それは二葉さんの意志も汲んで。
あのえんじ色のネクタイ…。
私、何も知らなくて、あの大きなドブに投げ捨ててしまった。
三咲に、それをちゃんと謝らないと。
「みー君昔は凄く気が弱くて泣き虫で、いつもふうちゃんにベッタリで。
ふうちゃんはいつもそんなみー君を、心配していたから」
「二葉さんは、三咲が大好きだったんですね」
そして、三咲も二葉さんが大好きだったのだろう。
「じゃあ、俺はもう出るから。
見送りはいいよ。
今日は1日ゆっくりと、好きに過ごして、
あまり暗い事ばっかり考えないで」
そう言って、岡崎社長は社長室から出て行った。