LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
「でも、あの日、最終面接の時、私の膝にネクタイを巻いてくれてから。
私はあなたの事がずっと好きだった!
そりゃあ、一度は、あんな風に嫌な事言われて、三咲の事は嫌いになったけど。
でも、今はすっごく三咲が大好きなの」
目の前の三咲が好きで好きで、涙が出て来る。
あの日、ネクタイを私の膝に巻いてくれた時、
スーツのズボンが汚れる事も気にせず、地面に膝を付いて私の膝にネクタイをこの人は巻いてくれた。
その三咲の優しさに、私は惹かれた。
「そっかぁ…。文乃、俺の事好きだったんだ」
「そう。でなきゃあ、あんな風に口説かれて、マンションの部屋迄行くわけないじゃない」
そう言うと、そっかぁ、と何処か安心したように三咲は笑う。
もしかしたら、今の今まで、私が軽いからこの人と寝たと思われていたのかもしれない。
「俺は多分、文乃の事ずっと好きだったと思う。
ネクタイ巻いた後も今さっき言ったように気になっていたし。
関係持った後喧嘩して、文乃の事本当に大嫌いと思いながらも、それ迄以上に文乃の事気になっていたから。
文乃が妊娠して、一枝君に結婚しろって言われた時は、突然でそりゃあ、困ったけど」
そうやって言われると、
私もこの人を嫌いだと思っていた時も、
心の何処かで、この人を思っていたのだろうか?
気になっていたのは、気になっていたから。
「今も、時々文乃に対しては、ムカつくな、って思う時もあるんだけどね。
それでも、大好きだよ」
「じゃあ、子供ダメになったけど、
私とこのまま結婚続けてくれるの?」
「え?もしかして、そんな事を文乃は心配してたの?」
そう言われ、まさにその通りなのだけど、
あまりにも三咲が驚いていて。
なんだか、それを認められない。
「三咲、一生私の側に居て」
そう口にして、なんだかプロポーズみたいだな、と自分で思ってしまった。
「一生なんて言わず、来世でも一緒に居てよ」
それに、頷いた。
「だから、もう文乃、二度とこんな風に居なくならないで」
「うん」
そう頷くけど、三咲の表情は重くて。
「三咲?」
三咲の顔を覗き込んでしまう。
「二葉君みたいに、文乃も居なくなるんじゃないかって、本当に怖かった…」
私が今回、こうやって家出のような事をして、
急に居なくなった二葉さんの事を、この人に思い出させてしまったのかもしれない。