LOVEBAD~ヤクザの息子の副社長と最低最悪の身籠り婚~
翌日。


朝、出勤の為にマンションのエレベーターホールに居ると、
岡崎社長がこちらへと歩いて来た。


岡崎社長もこのマンションに住んでいて、隣の部屋だから、この人とこうやって会う事も珍しくはない。


「文乃ちゃん、おはよう。
あれ?みー君は?」


「三咲は、今日は直行でO食品に向かうそうで、早めに出てます」


「なるほどね。
なら、今朝は俺の車で文乃ちゃん一緒に出勤する?」

「けっこうです」


「相変わらず、文乃ちゃんは冷たいなぁ。
いつまで経っても俺の事をお兄さんと呼んでくれないし」


そう、笑ってて、この人のキャラ的に、自分の秘書と不倫とかないような気がする。


「あの、香苗さんなのですが…。
毎年、三咲に誕生日プレゼントくれるみたいで。
昨日も持って帰って来て」


「え?もしかして、文乃ちゃん香苗女史にヤキモチとか?
独占欲強すぎない?」


「いえ、そうじゃなくてですね!
あの、三咲と話してたのですが、
香苗さん、いつも三咲に虎のグッズをあげるみたいで…。
それはなんでかな?って謎で。
岡崎社長、その虎の謎分かります?」


岡崎社長がタイガースファンで、その影響で香苗さんも虎に拘るのですか?、とか、その辺りは言えないけど。


「ああ。多分、香苗女史にみー君が虎好きなの話したかも。
昔ね、俺ら兄弟でサーカス見に行って。
そこで虎を見てから、みー君虎好きになって。
って、言っても、子供の時の話だから、
みー君もそんなのすっかり忘れてるだろうね。
それなのに、虎のグッズばかり貰ったら、困惑するかもね」


そっか。


真実は、わりと呆気ないものだな。


「ついだから訊いちゃいますけど、
岡崎社長は香苗さんと不倫とかしてないですよね?」


「凄い事をついでに訊くね?」


そう、笑っている顔を見てる感じ、
やはり三咲の言う事はハズレていると思った。


岡崎社長と香苗さんは、何もない。



「香苗女史がうちに入ったばかりの頃は、そんな事を噂される事もあったよ。
ほら?イケメン社長とその美人秘書だから、俺達が二人で歩いていると絵になって。
けど、文乃ちゃんも知ってるように、香苗女史は神沢君とラブラブで、俺なんて付け入る隙もないよ。
もうすぐ子供も産まれるし。
俺の一方的な片思い」



そう聞くと、岡崎社長は香苗さんに好意があるみたいに聞こえるが。

この人は、いつもこんな感じだ。


「なら、香苗さんの事は諦めて、以前二番目に良いと岡崎社長が言ってた、営業の夏村さんはどうですか?
うちの課の男性が言ってましたが、夏村さん、現在彼氏居ないみたいですよ?」

夏村さん、香苗さんと並んでうちの会社の美人社員。


「でも、二番目はやはり二番目だからね。
興味ないよ」


岡崎社長がそう言った所で、エレベーターが到着した。


なんだか、これ以上はその話を出来なくなった。


三咲が言うように、大人の男と女には色々あるのだろうか。





(終わり)



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