裸足のシンデレラは御曹司を待っている
直哉の頬に添えた私の手を彼の瞳からこぼれた涙が濡らした。でも、それはとても温かい涙だった。

「一昨日、遥香の家でシンちゃんを初めて見た時、自分に似ていると思った。記憶を取り戻した後、シンちゃんが自分の子供である事を願った。俺の子供を産んでくれたんだね。……ありがとう、遥香」

「直哉さん……。喜んでくれるんですね」

直哉の優しい瞳が私を見つめている。きれいな瞳の中に自分が映っている。

「嬉しいよ。でも、遥香は一人で大変だったはずだ。頑張ったんだね」

私は首を横に振った。
だって、シングルマザーとは言っても周りのみんなが助けてくれたから一人じゃなかった。

「ここのオーナー一家を始め、地元の人達が助けてくれたの。一人じゃなかったから、大丈夫です」

そう、城間のおじさん、おばあや陽太が本当の家族のように支えてくれていた。
ここにきて、陽太の告白を思い出し少し複雑な気持ちになってしまった。
その思考を戻すかのように直哉の声が聞こえる。

「そうか……。それでも大変な事がたくさんあったと思う。今さら遅いかもしれないけれど、過ぎてしまった時間は取り戻せない。できる事なら、もう一度、もし……君が受け入れてくれるなら、どんなかたちでもいい、一生大切にする」

直哉の手が私の手を包み込み、真っすぐな瞳を向けた。
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