裸足のシンデレラは御曹司を待っている
今、一生大切にするって言ってくれた。
でも、その前についていた言葉が気に掛かる。

「”どんなかたちでもいい”なんて、控えめな事を言わないでください」

直哉が、自信なさげに視線を落とす。

「遥香の幸せを考えると……。後悔のないようにしてほしい」

ああ、そうか。昨日の夜に真哉のお見舞いを持って来てくれた時に直哉は陽太に会っているんだ。
あの陽太の様子だと直哉にしてみれば、私と陽太が付き合っているように見えたんだ。
それで、どんなかたちでもいいなんて言ったのか……。
5年ぶりの再会では、お互いの環境が違っているも仕方のない事。すべてを鑑みて、選んだ言葉だった。

なんだか、いじらしく思えてしまう。
椅子から降りた私は、直哉に手を伸ばしギュッと抱きしめた。

「直哉さん、ありがとうございます。あの良ければ、真哉にパパだと言って会ってくれますか?」

「会わせてもらえるのか?」

パッと顔を輝かせる直哉が、愛おしい。
どうしよう、どんどん好きな気持ちが膨らんでくる。

「パパは、迷子になっていると言ってあるので、会えたら喜ぶと思います」

フッと直哉が笑った。
「確かに、ずっと記憶の中で迷子になっていた」

「おかえりなさい」

「ただいま。遥香、遅くなってすまなかった」

頬を寄せた胸からトクトクと少し早い心臓の音が聞こえた。また、この胸の温かさに包まれる日が来るなんて夢のよう。直哉の背中に回した腕に力を込める。すると、直哉も強く抱きしめてくれた。
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