裸足のシンデレラは御曹司を待っている
窓を開け放ち、リビングテラスのソファーに並んで座った。外は高い位置から照りつけている強い日差しで、緑の芝生の横にあるプライベートプールの水面がキラキラと輝いていた。
それでも、長い庇で日陰になっているリビングテラス。海から吹く風が心地よく肌を撫でていく。

隣にいる直哉からオリエンタルノートが香り、時折、肩が触れる。二人の距離が一段と近くなったのを感じ、なんだか、急に照れくさくなってしまう。

照れくさいのを誤魔化すように手元にあったスマートフォン、その中に収められた写真アプリを立ち上げ、真哉の写真を見せた。
2400グラムで産まれ、くちゃくちゃの顔で白いおくるみに包まれている写真から始まり、ミルクを飲んでいる写真、つかまり立ちをしている写真など、大量にある写真を解説付きで説明する。

直哉は、興味深そうに頷き、目を細めていた。
そして、ぽそりと呟く。

「かわいいな……。この頃に抱けなくて残念だ」

5年の月日の中で直哉が無くしてしまった一番大きなもの。それは、真哉との時間だ。産まれた時の産声も初めて歩いた姿も何もかも知らない。子供の成長は親にとっての励みや力になる。
直哉は、その素敵な時間を過ごせなかったんだ。

「そうですね。子供のかわいいは、小学校に上がる前がMAXだって言いますから……。でも、まだ、かわいい期間が残っていますよ」

直哉が眉尻を下げクスリと笑う。

「子供はいくつになってもかわいいって聞くけど、そんなに期間が短いなんて知らなかったよ」
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