裸足のシンデレラは御曹司を待っている

別邸の駐車場からプライベートプールのある芝生の庭を通り、やっと部屋のリビングソファーの前まで着いた。半分眠っている15キロの子供を抱えての移動はなかなかの重労働。さすがに息が上がってしまう。

私ってば、カッコいい事を直哉に言ったのに、ゼイゼイと息が上がっている姿を見られてしまった。なんだか、ばつが悪くて、えへへと笑ってごまかす。

テイクアウトで買った荷物をテーブルの上に置いた直哉は私の気持ちを汲み取ってくれたのか、苦笑いをしただけで謝罪の言葉は言わなかった。

お互いが無理をせず、出来ることを補っていくような関係が築けたらいいと思った。

先にソファーに腰を下ろした直哉のヒザの上にそっと真哉を託す。宝物を包み込むように直哉が手を添えた。
どんな夢を見ているのか、真哉は幸せそうにムニャムニャと口を動かしている。その様子に直哉は目を細め呟いた。

「子供の体温ってけっこう高いんだな」

「そうですよ。汗もいっぱいかくからこまめに拭かないと、あせもになるんです」

バッグからハンドタオルを取り出し、真哉の頭の下に差し込んだ。
記憶を取り戻したばかりの新米パパさんから目を離すのは少し心配だけれど、今がチャンス。懸念材料の着替えを今のうちに取りに行くことにした。

「あの、真哉が寝ている間、少し見ててもらっていいですか? 家に着替えを取りに行ってきます」

「ん、行っておいで、待っているよ」

「スマホ持って行くので、何かあったら電話してください」

玄関を出て隣の自宅に向かう。暗くなった空の下、見上げると寂しそうな三日月が浮かんでいた。

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