裸足のシンデレラは御曹司を待っている

待って、ちょっと、冷静になって考えてみよう。
幼馴染の陽太、家も近くて地元の友達や先輩後輩の繋がりも強いこの地域。
良く言えば、連帯感が強く。悪く言えば、過干渉。
誰と誰が付き合ったとか、人の口に戸が立てられないという諺がピッタリくるぐらい仲間内の情報が筒抜けだ。
陽太の言い分に齟齬を感じる。

「陽太……。でも、最近でこそ、彼女いなかったけど、いろんな子と付き合っていたよね」

私の指摘にバツが悪そうに陽太は顔を背けた。

「遥香が妊娠した時。オレは、まだ、大学出たばっかりのペーペーだし、遥香の眼中にオレが無いのはわかっていたけど、それなりにショックだったんだ。あきらめようと他の子と付き合ったりしたけど無理だった。あきらめきれないと思ってからは誰とも付き合っていない。そして、ずっとそばにいたらいつか結ばれるって……思っていたんだ」

陽太がそんな気持ちでいたなんて、全然気がつかなかった。
弟のようにしか考えていなくて、でも、たくさん助けてもらっていた。
陽太の好意に甘えるだけ甘えていたんだ……。

それなのに陽太に掛ける言葉が見つけられない。
黙って俯く私に陽太の切ない声が降りそそぐ。

「それに怖かったんだ。遥香との心地の良い関係が大切で、壊さないようにゆっくりと育んでいこうと考えていた。それなのに、今になってあいつが来るんて考えられないだろ⁉　遥香、行くなよ。それにあいつを選んだとして、お前、友達もいない東京で真哉と暮らしていけるのかよ」