裸足のシンデレラは御曹司を待っている
玄関の前で大きく深呼吸をしてからドアを開けた。

直哉が私に気が付き、軽く微笑む。真哉はまだ膝の上で眠っていた。
そっと近づき声を掛ける。

「直哉さん、ずっと抱いていると疲れちゃいますよ。そのまま眠らせて食事にしましょう」

「動くと起こしてしまいそうで怖いな」

新米パパの直哉は、おっかなびっくり体をずらし、真哉をソファーに寝かせるとバスタオルをお腹の周りに掛けてあげた。

「ずっと抱いていると重いでしょう。けっこう大変だったんじゃありませんか」

眠っている子供は力が抜けて、余計に重たく感じたはずだ。

「へんに力が入ってしまって、肩が張っている気がする。でも、間近で小さな手や顔の作りをじっくり見れて楽しかったよ。口の形とか遥香に似ている」

ゆっくり立ち上がった直哉は腕をぐるりと回し肩をほぐしながら、ダイニングテーブル方に移動した。

「目は直哉さんに似ているでしょう」

「自分と似ていると言われると嬉しいよ」

直哉はそう言うと柔らく微笑んだ。
テーブルの上にはさっき買った、お寿司やオードブルが並んでいる。キッチンからグラスやお皿を取ってきて、向かえ合わせに腰を下ろした。

「シンちゃん、起こさなくていいの?」

「食べながらでいいので、少し落ち着いてお話がしたいです」

これからのために、話をしなくてはいけない。

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