裸足のシンデレラは御曹司を待っている
例え、仲の良い幼馴染という関係に戻れなくても今まで支えてくれた陽太には、自分の気持ちを伝えておかないといけない。決意を固め、ギュッと手のひらを握りしめた。

気持ちを切り替えるように、テーブルの上に並んだオードブルのポテトや揚げ物を取り皿に乗せ、直哉に話しかける。

「ところで、明日は、どこか行きたい場所ありますか?」

「そうだな、明日の昼間はシンちゃんも一緒に買い物に行きたいんだけどいいかな?」

直哉は、ふいに顔を上げた。前髪がサラリと動き、その瞳は室内のライトに揺らめいて蠱惑的に見える。何気ない動作にも男の艶を感じてドキリとしてしまった。オードブルのポテトを一つ口に入て、荒く咀嚼し慌ててゴクンと飲み込んでから返事をする。

「朝、シンの通っている保育所にお休みの連絡入れますね」

自分の名前が話題にのぼって気が付いたのか、ソファーで眠っていた真哉がモゾモゾと動き出した。
様子を見に立ち上がり覗き込むと真哉は薄目を開けて、小さな声で「ママ」と呟いた。寝ぼけ眼の息子の頭をそっと撫でながら声を掛ける。

「シンちゃん、パパとママと一緒にごはん食べようよ」

正直言って、こんな時間に起き出したら夜寝ないかも……。と不安に駆られる。でも、いっぱい遊んでお腹も空いているはずだからご飯は食べさせてあげたい。そんな、思いとは裏腹にまた真哉は夢の中に落ちていった。

「起きそうもないんで、ベッドに運んじゃいますね」

ヨイショっと、色気のない掛け声と共に真哉を持ち上げた。
いや、しょうがない。だって、重たいんだもん。
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