裸足のシンデレラは御曹司を待っている
城間別邸は2LDKの平屋作り、ふたつある個室はどちらも10畳ほどの広さにクローゼット付き、それぞれの部屋にセミダブルのベッドが2台入っている。

そのうちのひとつに繋がるドアを直哉が開けてくれた。ベッドに辿り着き、再び、ヨイショと色気ない掛け声で真哉をベッドにおろすと、ふぅーと息を吐く。
モゾモゾ動く真哉の背中をトントンと軽くたたいて、落ち着かせ寝かしつけた。

「寝たの?」
ベッドを覗き込む直哉の低い声が聞こえる。

「うん、また寝ちゃった。パパと会えたのが嬉しくてはしゃぎ過ぎたんだんだね」

直哉は目を細め、愛おし気に真哉を見つめている。

「寝顔、かわいいな」

「寝てる時だけ天使ですよね」

「寝ている時だけ?」

直哉の問いかけに自信満々で返事をする。なにせ、実体験を踏まえた感想なのだ。

「だんだんと悪い言葉も覚えてきて、最近、小憎たらしいときがあるんですよ。この前もママのデブとか言われて、えーんって泣き真似したら、ごめんねって謝ってくれました」

直哉はクスリと笑い「起きていても天使じゃないか」と親バカぶりを発揮している。いきなり4歳児のパパになってしまって、びっくりしたはずなのにこんなにも受け入れてくれて嬉しかった。

「そうですね。私たちの天使です」

私の腰を引き寄せ、直哉がギュッと抱きしめて来た。オリエンタルノートの香りが鼻をくすぐり、直哉の体温を感じる。

「シンちゃんを産んでくれて……ありがとう。遥香」
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