裸足のシンデレラは御曹司を待っている
慌てて、しゃがみ込み胸を両手で包み込み隠す。それはまるで、小さな子供のような姿勢。
さっきの会話を振り返ると「一緒に浴びる?」からの「先に浴びていいですか?」は、私的には「先にシャワーを浴びて、寝室で待っています」だったんだけど、捉えようによっては、「先にバスルームで待っています」だ。

きゃー、恥ずかしい。誘うようなセリフ。
それに油断した体を明るい所で見せるなんて!

直哉に視線を向ければ、低い位置からの姿勢で、彼の足元が見える。赤くケロイド状になってざっくりと大きな傷跡が間近に見えた。あっ、と思いながら視線を上げると、直哉が困った顔で眉尻を下げている。

「やっぱり、怪我の跡……気持ち悪いよね」

お風呂に入って来た時に「ひゃっ!」なんて変な声を出したから、そんな事を言わせてしまったんだ。そんなつもりじゃなかった。

「違うんです。直哉さんの体の事じゃなくて、自分の体のことなんです。子供を産んでからお肉が付きやすくなって体のラインが崩れてしまったから、見られるのが恥ずかしかくて……。だから、先にシャワー浴びて、寝室で待っていようと思ったのに言い方が悪くて、一緒に入るとか思わなくて、びっくりしただけなんです」

私の言い訳に直哉がホッとした表情を見せる。

「遥香は綺麗だよ。肌もモチモチして今すぐ食べてしまいたいぐらいだ」

直哉は冗談めかして、クスリと笑う。

「直哉さんも素敵ですよ。細マッチョで……ムシャブリツキタイデス」

最後の方は、ゴニョゴニョと小さめの声で言った。

< 134 / 179 >

この作品をシェア

pagetop