裸足のシンデレラは御曹司を待っている
屈みこんだ私は自分の膝を手のひらでコネながら、思わず言ってしまった失言をどうにか消せないかと冷や汗をかいている。

きっと、聞こえていなはず……。

なんて、虫の良い話などない。

プハッと、直哉が笑い出した。

や、やっぱり聞こえちゃいましたよね。

「大胆な誘惑、光栄だな」

そんな事を言って、笑いが止まらないのか、綺麗に割れた腹筋が揺れている。気を付けないと腰に巻いたタオルが落ちてしまいそう。
はわわっと、焦るけど目が離せない。

「でも、今はゆっくりお風呂に入ろう。いっぱい歩いて疲れたから筋肉を休ませないと」

そうだ、今日は水族館に行ってたくさん歩いた。全体的に綺麗に筋肉がついて日頃から鍛えているような体つきだけど、左足をかばって歩いて疲れているに違いない。直哉にはゆっくりお湯に浸かって疲れをほぐしてもらおう。

「私……先に上がって……」

「そんなこと言わないで、お風呂、一緒に入ろう。むしゃぶりついてもいいから」

きゃー、そんなこと言って、ひとの事を揶揄って、本当にいきなりむしゃぶりついたらびっくりするクセに!!

「なっ、直哉さん、ゆっくり浸かってください。私、のぼせそうなので先に上がらせて頂きます」

「なんだ、残念だな」

と言って、まだクスクス笑っている。
もう!
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