裸足のシンデレラは御曹司を待っている
先に出ると言ったけれど、立ち上がれば、何も身に着けていない体を直哉の前に晒す事になってしまう。でも、立ち上がらないとお風呂から出る事も出来ない。

悩んだまま立ち上がれない、私の直ぐ横に直哉が膝を着いた。そして、そっと甘い低音で話かける。

「遥香の髪、洗わせてくれる? シャワーかけるよ。目を瞑って」

返事をする間も無く、直哉はシャワーのカランを上げた。反射的に目を瞑る。
直哉は、私の髪の間に手を梳きいれ、温かいお湯をかけた。
そして、シャンプーを泡立て私の髪を洗い始め、バスルームにフローラルの甘い香りが立ち込める。

男の人の大きな手で、頭皮をマッサージするように洗われるのは、なんて気持ちがいいんだろう。体も心も蕩けていくよう。

「はぁ~、気持ちいい」

思わず口から声が出る。

「お風呂、一緒に入ってくれるんだったら、いつでも洗ってあげるよ」

「本当⁉ この特典は魅力的。今度、真哉も一緒に入ってもいいですか?」

「怪我の傷、怖がらないかな?」

「子供って、すごく色々考えているから、説明すればちゃんとわかってくれるので大丈夫ですよ」

そんな話をしているうちに髪の毛が洗いあがる。お湯で濯げば、サッパリとした洗い心地。

「さあ、お湯に浸かって」

直哉に促されるまま立ち上がり、バスタブに張られたたっぷりのお湯に身を沈めた。
チャポンと水音を立て直哉が私の後ろに入った。肌と肌が触れ、さっきまでと違う距離感にソワソワと落ち着かない気持ちになる。

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