裸足のシンデレラは御曹司を待っている
琉球グラスが一回りすると、その後は無礼講だ。
するとみんなの視線が私と直哉に集まった。
待ってました!とばかりに、ママ友がおしぼりをくるりと丸め、芸能レポーターのマイクよろしく差し出して、ニヤニヤしながら寄って来た。近くの席の人たちもおしぼりマイクを向けてきて、にわか記者会見の装いだ。

「えー、ご婚約おめでとうございます。今回の電撃ともいえる婚約発表、まずは、お二人の馴れ初めをお伺いいたします」

そんなことを言われても、複雑すぎてどこから話していいのか、困ってしまい、直哉をちらりと伺い見る。
直哉は何のツボに入ったのかわからないけど、肩を震わせて笑っていた。

私の友達だから私が答えるんだよね。意を決して、TVに出ている女優のような声色を作るため、「ん、んっ」と咳払いをしてから口を開いた。

「城間別邸にお客様で来た直哉さんにひとめぼれしたのが最初です」

あー、恥ずかしい。
火照った顔を手でパタパタと仰ぎながら、直哉の様子を再び伺うと、驚いたような表情を浮かべている。そして、耳元に顔を寄せ内緒話をするように手を当てて「俺もひとめぼれだよ」と囁いた。
余計に顔が熱くなる。
漫画にしたら、”ぷしゅー”って、擬音がはめられそう……。

「イケメンにひとめぼれ、納得の回答です。見ての通りラブラブですね。これじゃ、シンちゃんが出来ちゃったのも納得です。末永くお幸せに! では、現場からは以上です」
と、ママ友がみんなに言って、ドッと笑いが巻き起こる。


< 160 / 179 >

この作品をシェア

pagetop