裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「別邸の管理人、後任決まったから……」

「えっ⁉ もう? 早かったね」

思わず驚きの声を上げた。
自分から言い出したこと。離れるにあたり後任が早々に決まったのは、安心したけど、なんとなく寂しいような気もした。

「昨日の飲み会の時に、その話をしたら金城沙奈絵が、通いでやってくれるって話になったから」

金城沙奈絵と聞いて、なんだかホッとした。陽太の同級生で、中学の野球部のマネージャーだった子だ。

「沙奈絵か~。ふうん。良かった。良かった」

「なんだよ、その含みのある言い方は。元カノだけど中学ん時だし、干支も一周回ってんだから時効だ。と、とにかく後任がきまったから東京に行って帰ってこなくても大丈夫だ」

何を焦っているんだか、自分から元カノと自白しましたよ。まあ、陽太は、そこそこモテていたし心配ないでしょう。

「私に帰って来いと言ったり、帰ってこなくても大丈夫と言ったり、陽太が心配してくれている以上に幸せになるから、ありがとね。私も陽太の幸せを祈っているよ」

「隣の家は、暫くそのままでいい。風通しておくから」

「うん、ありがとう。じゃ、別邸の鍵と隣の鍵……」

そう言って、ポケットの中から2軒分の鍵を出した。私の手から陽太の大きな手の中に鍵が渡る。それを陽太が自分のポケットに仕舞い、真哉に視線を落とす。

「シン、パパ好きか?」

「うん、パパすき。でも、ようちゃんもすき、かっこいいもん」

陽太がニカッと笑い。真哉を高い高いするとキャーキャーと楽しい声を上げていた。

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