裸足のシンデレラは御曹司を待っている
2つ年上の遥香は、お姉さんぶって世話を焼きたがり、それを受け入れたり、反発したり、気が付けば本当の姉と弟のような関係が定着してしまった。
それでも、夏の白いセーラー服が眩しかった日、不意に腕をつかまれたのが、妙に照れくさかったのを覚えている。

何より忘れられないのは5年前。
TVの天気予報で台風が近づいているとアナウンサーが注意を促している。気になって窓の外を見れば、夕日が異様なほど空を真っ赤に染め上げていた。

2泊3日の予定で東京に行った遥香が、台風のせいで帰って来れないかも、と、隣の家を見ながらふと思った。その時、誰も居ないはずの家に明かりが灯る。慌ててサンダルを履き、隣の家の玄関を開けた。

「遥香、いるのか?」

「あ、陽太……」

扉の開いた奥の部屋から俯き加減の遥香の声が聞こえた。その様子に酷く違和感を覚え、ズカズカと家に上がりこみ、遥香の腕を捕まえた。

「何があった?大丈夫か?」

逸らした顔はあきらかに泣きはらしていて、疲れ切った様子。今まで見たこともない程、弱っていた。

「……なんでもない」

「そんなウソついったって、ごまかせるわけないだろ」
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