裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「えっ⁉」
遥香の一言に驚いて目を開けた。でもオレにつわりだと言った時には、産むと決めていたんだろう。
そして、一番気になっていた事が口をついた。
「あ、相手は誰なんだよ。子供の事知っているのか」

「……ひとりで産むの。だって、やっと出来た私の家族なんだもん」

再び、遥香の瞳からポロポロと涙が落ちる。
幼い頃に母親を亡くし、二年前に親父さんを亡くした遥香は天涯孤独の身になった。オレやおばあが家族のように接していても、どこか心の奥底で孤独を感じていたのかもしれない。

この時、オレの頭の中はぐちゃぐちゃで台風のように荒れ狂っていた。
遥香の相手は誰なんだ。オレの知っているヤツなのか?なんで、遥香を泣かすような事をしているんだ。
怒りとか嫉妬とかそんな感情が湧いて来る。
今まで、蓋をして見ないようにしていた何かがむき出しになっていくようだった。

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