裸足のシンデレラは御曹司を待っている
家の中の壁はさすがに普通の壁で仕切られているので浴室やサニタリールームそして、2つあるの寝室のプライバシーはある程度保たれている。
浴室の横にあるサニタリースペースの床もタイル張りで水洗いができる作りなので、そこもゴシゴシ磨くと少し邪念が払われたようでスッキリ!

リネンのストック扉を開き。タオルやシーツを取り出した。
浴室、洗面のタオルの交換、備品の補充、そして寝室に入ってシーツを外す。すると、直哉のオリエンタルノートの移り香がふわりと香る。
このベッドで直哉が眠っていたというリアル感が増して、頬がまたブワッと熱くなる。

「仕事、仕事しなきゃ」

正直言って、この城間別邸の仕事は以前働いていた会社に比べたら自由も効くし、緩くて気分的にも追われずに楽だ。
以前、ハードワークで体を壊した私は、亡き父の親友だった城間オーナーの計らいで、(お情けともいう)この仕事をさせてもらっている。なのに、万が一にもお客様とトラブルになるなんてことは是が非でも避けたい。

それなのに、昨日からお客様との距離感がおかしな事になっている。

「仕事……しよ」

キッチンに戻り、出来上がったコーヒーをカップに注ぎ、直哉の前にコトリと置いた。

「安里さんは?」

きゃー、やっぱり言われた。
この人、ホント一人でいるの嫌いなんだ。なんで、一人で来たんだろう? モデルみたいにきれいな人だって選り取り見取りだと思うんだけど。

「私は、食器を片付けて、あ、プールのゴミを取らないといけないのでまだ忙しいんです」

「じゃあ、待っているから」

< 23 / 179 >

この作品をシェア

pagetop