裸足のシンデレラは御曹司を待っている
5
雲のない抜けるような青空、高く昇った太陽の強い日差しが降り注いでいる。
プールの水面がキラキラと反射していた。
直哉の顔が近づき、すっと私の顔に影が差しこむ。
彼の唇が私の唇に重なった。

あ、どうしよう。
そんなことを思った時には彼からキスを落とされ、心惹かれていた私はそれを素直に受け入れてしまっていた。
そう、切れ長の瞳の虹彩に囚われた時から恋をしていた。

最初は優しく重なっていたキスが、唇を舐め上げるように動き、だんだんと貪るようなキスに変わっていく。
私を支える直哉の腕に力が入るのがわかった。

顔の角度を変え、何度も繰り返し、やがて息が上がり始める。
風の音も木々のざわめきも遠のいて、重ねた唇が熱く感じた。
身じろぎするたびにチャプチャプと水音が聞こえてる。

息継ぎのために唇が離れると切なげに揺れる瞳が私を見つめていた。
欲しいものは、なんでも持っていそうな人なのに時折見せる寂し気な瞳。
その理由(わけ)を知りたくなる。
知ったとしても何ができるはずもないのに、どうしてこんなに気持ちになるんだろう。

自分とは違う世界に住んでいる人。
彼の寂し気な瞳を慰めたくて、自分からキスをした。
こんなことをしてはダメなのに、止めることができない。
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