裸足のシンデレラは御曹司を待っている
自宅兼管理棟の先にある2階建てのCR造の建物の引き戸をガラガラと開けた。
『城間別邸』のオーナーの実家で、現在は城間の母・登紀子と次男・陽太が暮らしている。

「遅くなってごめんね、面倒見てもらって助かっちゃった。おばあ、ありがとう」

「いいって、遥香ちゃん。シンちゃんもいい子だったよ」

登紀子の足元で遊ぶ我が子・真哉が、にぱぁっと笑う。

 ひゃー、シンちゃん、かわいい!
 親バカでいい、かわいいものはかわいい!

「元気なんだけど微熱があると保育所預けられないし、宿のお客様の到着もあって、困っていたから、ホント助かっちゃった」

「いいよ。どうせ、庭いじりぐらいしかすること無いんだから遠慮しないでいつでもおいで」

「ありがとう。シンちゃん帰るよ」

「まま、ボクおりこうだったよ」
と舌たらずのかわいい声で、ぷにぷにの小さな手を伸ばす。
 生まれた時に2400グラムしかなかった息子は、4歳3か月になった今、体重が15キロを超してずいぶん重たくなった。

 亡き父の親友だった城間和明の計らいで一棟貸しの高級別荘の管理人として働き始めて5年。途中トラブルもあって迷惑をかけたけど、父親代わりだからと温かい目で見守り助けてくれる。城間のおじさんには頭が上がらない。
 同じ敷地内に住む登紀子の助けもあって、シングルマザーでもどうにか暮らしている。
 
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