裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「遥香ちゃん、帰るなんて言わないで夕飯も食べていきなよ。大勢で食べたほうがおいしいさー」

「ありがとう、助かる。夕飯の支度手伝うよ」

真哉の相手をしながら台所で登紀子の手伝いをしていると、まるで自分の本当のおばあちゃんのように感じる。
子育ての大先輩は、朗らかな笑顔を浮かべ、慣れた手つきで野菜を刻んでいる。
おばあがいなかったら、一人で子育てなんて出来ないなぁとつくづく思う。

暫くすると車のエンジン音が聞こえ玄関先に停まった。

「陽太が帰ってきたみたい」

「ようちゃん、かえってきた。わーい。わーい」

城間陽太は、地元の信用金庫に勤める幼馴染。私の2コ下だけど、頼りになる姉弟的存在。
城間のおじさんと長男の弘明は東京にいて、次男の陽太は沖縄に残った。この家で祖母である登紀子と暮らしている。

「ようちゃん、おかえりー」

「なんだ、シン来てたんだ」

陽太が真哉を見つけると目線を下げ頭を撫でてくれる。真哉は満足げににぱぁと笑っていた。

「おつかれさま。おばあが夕飯ごちそうしてくれるっていうから、おじゃましているんだ。あ、ついでに帳簿チェックしてもらっていい?」

「今日、外回りで汗かいたから、シャワー浴びてくるよ。帳簿は夕飯の後でもいいだろ?」

「うん、疲れているのにごめんね」

大丈夫だよと言う風にニカッと笑う陽太の笑顔は、子供の頃から変わらず安心する。
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