裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「おい、ぼーっとしてどうした。箸、止まってんぞ」

陽太に声を掛けられ、ハッとした。
食事中に考え込んじゃった。

「あ、ちょっと暑さで疲れちゃったかな」

「帳簿、急ぎじゃないから別の日でもいいぞ」

「溜めるの嫌いだから、陽太が大丈夫なら見てくれる? ちょうど、シンも寝て静かだし」

「ん、わかった。じゃ、早くたべな」

せっかくおばあが作ってくれた。ゴーヤーチャンプルーもテビチも何の味も感じない程に私の気持ちは落ち込んでいた。


お腹がいっぱいになって横で眠る真哉の顔。子供にしては目鼻立ちのはっきりした顔立ちは、柏木直哉によく似ていると思う。

やっとの思いで食事を終え、おばあと片づけをした後、陽太の部屋におじゃましてPCを立ち上げた。
WEBの会計ソフトと宿泊サイトのデータを照らし合わせて入力ミスが無いか簡単なチェックだ。
レシートもまとめてスキャンしてデータで残っているから一括で見れる。

宿泊サイトの分は、宿泊客が支払ったのが売り上げ、その約15~20%がサイトへの支払いとなる。内訳は手数料、ポイントサービス、アフィリエイト、クーポンなど組み合わせによっていろいろだ。

陽太が売り上げ経費の照合のため、宿泊サイト該当の顧客一覧表を呼び出した。するとそこには、今、泊まっている柏木直哉の名前も表示される。

カーソルがその名前の上で止まり、陽太の眉がピクリと動く。
その様子に何が気づかれたのでは? 
と、手にじっとり汗が浮かぶ。

「なあ、遥香。こいつって、前に来た事ある奴だよな」

陽太の突然の指摘に思わず息を飲む。

< 34 / 179 >

この作品をシェア

pagetop