裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「5年前、お前がさ、様子がおかしくなって、急に仕事休んで出かけただろ。で、帰ってきたら妊娠してましたって、当然相手は誰だってなったじゃん。でも、遥香は頑として相手の名前を言わないし、もしかしてって、宿泊名簿見たんだよ。あの時期に単独で来ていた若い奴ってコイツしかいなかったから覚えてる。まあ、地元で里帰りした誰かとか色々考えたんだけど、地元の奴なら絶対にバレるし」
と、私の顔をチラリと見る。

私自身、今、自分がどんな顔をしているのか……。
視線を合わせられない時点で絶対に気が付いているはずだ。
陽太が、怒りを抑え込むように普段聞いたことのない低い声で私に問いかける。

「今さら、ノコノコやって来たコイツにどういうつもりか聞いたのか?」
 
今までずっと手助けをしてくれていた陽太にこれ以上隠すことなんて出来ない。でも、今の状況をなんて説明すればいいんだろう。柏木直哉が宿泊しに来た意図がわからないのにどうもこうもない気がする。

「陽太、ごめん。私も混乱していて上手く話せないかも……。柏木直哉は遺伝子的には真哉の父親なんだけど、知らせるつもりはないんだ。だって、迎えに来るって言ったのに迎えになんてこないし、電話も通じないSNSも返事がない。会いに行ったのにコンシェルジュが繋いでくれないとか。私、完全に遊ばれたんだよ。それで、今回も初めましてって言われて、ホント、何しに来たんだよ!って、お客様じゃなかったらぶん殴りたい」
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