裸足のシンデレラは御曹司を待っている
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「はー、今日も暑そう」

真っ青に晴れ渡った空に、白い雲が流れていく。
気持ちの良いお天気なのに、最悪の気分だ。

保育所に息子を預けた後、提携ホテルに立ち寄り受け取ったバスケットを持って隣の『城間別邸』に足を進める。

花ブロックを過ぎた辺りでプールから水音が聞こえて来た。

ちょうど直哉がプールから上がっているところで、つい目が行ってしまう。
水着をつけているとは言え、素肌の面積が多くて焦る。
そして、水に濡れた髪をかき上げる仕草もどことなく艶めいている。
裸をジロジロ見ていると思われたくなくて、少し視線を下げながら声を掛けた。

「おはようございます。お食事お持ちしました」

と言ったところで、視線が固まった。
直哉の左足の膝から下にザックリとえぐれたような傷跡が見えたからだ。
そういえば、体の線も以前より細くなっている。

事故に遭ったと言っていたけれど、ずいぶん酷い傷だ。どれだけ大変な思いをしたんだろう。

「あ、ごめん。気持ち悪いもの見せてしまったね。これでもだいぶマシになったんだ」

直哉は、気まずそうに近くに有ったバスタオルを手に取り、何気なく足を隠す。

私の知っている直哉の姿とはずいぶん違ってしまっていた。知らない直哉を目の当たりにしてショックだった。
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