裸足のシンデレラは御曹司を待っている
どうにか無事に階段を降り切った時には心底ホッとした。
鍾乳洞の中は時間がゆっくりと流れ、辺りを照らす薄明りの中、幻想的な岩肌がまるで母親の胎内にように包み込む温かみを持っていた。
その中で、たくさんの人が預けた瓶が静かに熟成の時を過ごしている。いつか迎えに来てくれる人が現れるその日まで待ち続けていた。
直哉は、ゆっくりと鍾乳洞の中を見回している。そして、おもむろに話し出した。
「すごいな壮観だ。安里さん無理に付き合わせてしまって悪いね」
「いえ」
「実は、足に怪我をした時に頭にも怪我を負ってしまい、その時期の記憶がないんだ。今回、ここの通知をもらって失った記憶の手がかりになればと思って来たんだけど、そう、上手くは行かないもんだな」
まさか、そんな……。
直哉の言葉の端々がおかしいと思っていたけど、本当に忘れられていたなんて、思いも寄らなかった。
どうしたらいいの? その言葉が頭の中を駆け巡る。
「安里さん、大丈夫?」
「えっ⁉」
「涙が……」
直哉の手がスッと伸びて頬を包むように涙をぬぐう。
あまりの衝撃告白に自分自身、泣いていることに気づいていなかった。
鍾乳洞の中は時間がゆっくりと流れ、辺りを照らす薄明りの中、幻想的な岩肌がまるで母親の胎内にように包み込む温かみを持っていた。
その中で、たくさんの人が預けた瓶が静かに熟成の時を過ごしている。いつか迎えに来てくれる人が現れるその日まで待ち続けていた。
直哉は、ゆっくりと鍾乳洞の中を見回している。そして、おもむろに話し出した。
「すごいな壮観だ。安里さん無理に付き合わせてしまって悪いね」
「いえ」
「実は、足に怪我をした時に頭にも怪我を負ってしまい、その時期の記憶がないんだ。今回、ここの通知をもらって失った記憶の手がかりになればと思って来たんだけど、そう、上手くは行かないもんだな」
まさか、そんな……。
直哉の言葉の端々がおかしいと思っていたけど、本当に忘れられていたなんて、思いも寄らなかった。
どうしたらいいの? その言葉が頭の中を駆け巡る。
「安里さん、大丈夫?」
「えっ⁉」
「涙が……」
直哉の手がスッと伸びて頬を包むように涙をぬぐう。
あまりの衝撃告白に自分自身、泣いていることに気づいていなかった。