裸足のシンデレラは御曹司を待っている
『必ず迎えに来るよ』この言葉が果たされなかったのには、理由があったんだ。
信じて待っていたのに連絡が取れずに切ない思いをした。直哉のいる東京のタワーマンションに訪ね、結局会えずに泣いたこともあった。
そして、直哉の子供を産んだこと、全部言いたい。あなたが無くしてしまった大切なものはここにあるんだと。

寂しそうに俯く直哉になんて声を掛けていいのか……。

もしも、今すぐに感情に任せて5年前の出来事を直哉に告げてしまったとしたら、私の事を覚えてもいない彼とどうなるというのか。

お金目当ての狂言と思われてしまうかもしれない。たとえ信じてくれたとしても、大きな会社の御曹司である直哉と自分ではあまりにも不釣り合い。DNAで真哉の事は自分の子供だと認定されたとしても、記憶にない女など必要ではないだろう。親権を争うような裁判になったとしたら自分など勝てる訳もなく真哉を奪われてしまうかもしれない。
真実を話していいものか気持ちが定まらない。

「……もしも、記憶がもどって、この先の人生に影響を及ぼす事だとしても思い出したいんですか?」

真っすぐに直哉の瞳を見つめ問い掛けた。
< 46 / 179 >

この作品をシェア

pagetop