裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「滞在時間中お手伝いさせていただきます、安里遥香と申します。よろしくお願いいたします」

邸内に入り、施設内の様子を一生懸命に説明している彼女ばかりに目が行き、気もそぞろ。あまり見過ぎては、ヤバイ奴認定されかねないので、テラスリビングのソファーに腰を下ろし、窓の外を眺めていた。
それでも、意識は安里さんに向いてしまう。

目の前のローテーブルにコーヒーが置かれた。

「お待たせいたしました。今日のご予定はお決まりですか？　近隣のレストランのご予約や観光などサポートさせていただきます」

その言葉に漬け込むように強引に彼女を誘う。

「沖縄の北部は水族館ぐらいしか知らないんだ。この建物が気になって来てしまったんだけど、周辺の案内を頼んでもいいかな？」

「あ、こちらに周辺の案内図がございますので……」
と、地図を取り出し説明しようとした。

誘っているのに気が付いてくれない。
真面目だな。

「安里さん、君に案内してもらいたいんだ。それに、一人で食事をするのも味気ない。お願いできないだろうか？」

「え？　私ですか？」

驚いたように目を見開く、クリクリと動く瞳が可愛らしい。

「そう、素敵な女性に案内してもらって、一緒に食事をしてもらったら料理も一層美味しく感じると思うんだ。行ってみたいレストランがあるんだけど、ニ名からでないと予約もできない。付き合ってもらえると助かる」

ちょっと、必死過ぎだな。と自分でも思った。でも、こうでも言わなきゃ、真面目そうな彼女は応じてくれそうにない。
< 59 / 179 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop