裸足のシンデレラは御曹司を待っている

「昨日は、迷惑をかけた。それで……」

その時、シャカシャカと直哉の言葉を遮るように私のスマホから軽快な着信音が鳴り響く。

あー、しまった。バイブレーション機能にしていなかった。

「すみません」と言いながらワタワタとスマホを取り出し、表示を見ると息子が通う保育所からの着信だった。

え、保育所からなんて、真哉に何かあったのかしら？
ざわりと嫌な予感に襲われる。

「俺の方は急ぎじゃないから、どうぞ電話に出て」

直哉の言葉に頷き、慌てて席から立ち上がり、スマホの画面をタップした。外で通話をしようと玄関に足を進めながら「もしもし」と話を始めた。電話の向こうでは、慌てた様子の保育士の声がする。

「えっ？……怪我？……それで？……わかりました。すぐに伺います」

思わず、直哉の方に振り返った。話の端々で雰囲気を感じ取ったのか、眉尻を下げ心配そうな顔をしている。
直哉が言いかけた言葉の続きを聞きたかった。けれど、今は、保育所に急がなければならない。