裸足のシンデレラは御曹司を待っている
一休みしたら、薬の受け取りに行こうと思っていたけど、真哉がグズって無理かも⁉ 
それに、疲れてしまって動きたくない。
うーん。

スマホを取り出しSNSアプリを立ち上げた。そして、アドレスの中にある城間陽太の名前をタップする。
『真哉が手首捻挫して処方箋預けてあるから、仕事の帰りにもらって来てくれるかな?』

送信するとすぐに返事がある。

『わかった』

それだけの短い内容。ひらがなの『わ』だけ、入力すると出てくる定型文。
スマホの返信に関しては、めんどくさがりの陽太らしい内容だなと思った。

「あー、ホント疲れた。私も休憩しよ」

台所でマグカップに、インスタントコーヒーに砂糖を入れお湯を注いでかき混ぜる。冷蔵庫から牛乳を取り出し、たっぷりと入れた。ぬるいカフェオレ。

子供が生まれてからの家での定番。これなら万が一こぼしても火傷をする心配がない。

真哉が眠るベッドの脇に座り込み、ベッドを背もたれにして体育座りをした。
手にしたマグカップの中のカフェオレを口にすると、まろやかなミルクと砂糖の甘さ、そしてコーヒーの香りに癒される。

ふーっ。と、息を吐きだし目を瞑る。
すると、直哉の柔らかなの微笑みが脳裏に浮かぶ。

5年前、熱い日差しに焼かれるようにプールで抱き合い情熱を交わした。
それからは、直哉が東京に帰るまでのわずかな日々を惜しむように、ふたりで指を絡ませ何度も愛しあった。

昼間は、二人で出かけた。見晴らしの良いレストランとか、美味しい定食屋さんなど、庶民的なお店にも行ったし、有名リゾートホテルのレストランで海を見ながらコース料理を堪能した。
二人でいるのが楽しくて、何をしていても幸せだった。

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