裸足のシンデレラは御曹司を待っている
「シンちゃん、おじさんがね。絵本くださったの。ありがとうしてね」
遥香の口から出た《《おじさん》》という言葉に打ちのめされる。遥香は、どんな気持ちでいるのか、彼女のよそ行き顔からは窺い知ることが出来ずにいた。
「おじさん、えほん、ありがとう。やった!トーテムのえほんだ」
袋の中から絵本を取り出し、はしゃぐシンちゃん。その様子に遥香は眉尻をさげ少し困った顔を見せる。
「ご心配おかけして……。この通り元気なんです」
シンちゃんに視線を移した遥香は、よそ行きの顔から変わり、穏やかな母親の表情を浮かべた。
「元気そうで安心したよ。顔の擦り傷が痛々しいけど、男の子はやんちゃなぐらいが、ちょうどいい」
「そうなんですけど、その分、心配も多くて……」
嬉しそうに絵本を見ていたシンちゃんが、パッと顔を上げた。そして、慌ててサンダルを履き、俺の横をすり抜け、玄関からとび出して行く。
シンちゃんの後を追うように振り返った俺の目に、ガッシリとした身体つき、浅黒い肌、短く刈れた髪型の男性が映る。
「ようちゃん、みて!トーテムのえほん、きのうのおじさんにもらったの」
「シンちゃん、絵本もらったのか。良かったな」
男性はスッと手を伸ばし、シンちゃんを高く抱き上げた。
高く抱かれたシンちゃんは満面の笑みを見せている。
まるで、本物の親子のような二人。
憧れてやまないその光景に胸の奥が絞られるように痛む。自分の居場所がここには無いんだと思い知らされた気がした。
男性は、シンちゃんを抱いたまま、俺の方を向く。
その瞳は、鋭く俺を見据えていた。
遥香の口から出た《《おじさん》》という言葉に打ちのめされる。遥香は、どんな気持ちでいるのか、彼女のよそ行き顔からは窺い知ることが出来ずにいた。
「おじさん、えほん、ありがとう。やった!トーテムのえほんだ」
袋の中から絵本を取り出し、はしゃぐシンちゃん。その様子に遥香は眉尻をさげ少し困った顔を見せる。
「ご心配おかけして……。この通り元気なんです」
シンちゃんに視線を移した遥香は、よそ行きの顔から変わり、穏やかな母親の表情を浮かべた。
「元気そうで安心したよ。顔の擦り傷が痛々しいけど、男の子はやんちゃなぐらいが、ちょうどいい」
「そうなんですけど、その分、心配も多くて……」
嬉しそうに絵本を見ていたシンちゃんが、パッと顔を上げた。そして、慌ててサンダルを履き、俺の横をすり抜け、玄関からとび出して行く。
シンちゃんの後を追うように振り返った俺の目に、ガッシリとした身体つき、浅黒い肌、短く刈れた髪型の男性が映る。
「ようちゃん、みて!トーテムのえほん、きのうのおじさんにもらったの」
「シンちゃん、絵本もらったのか。良かったな」
男性はスッと手を伸ばし、シンちゃんを高く抱き上げた。
高く抱かれたシンちゃんは満面の笑みを見せている。
まるで、本物の親子のような二人。
憧れてやまないその光景に胸の奥が絞られるように痛む。自分の居場所がここには無いんだと思い知らされた気がした。
男性は、シンちゃんを抱いたまま、俺の方を向く。
その瞳は、鋭く俺を見据えていた。