夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。

今日は晴れてたから

傘は持って来なかった



『オマエのこと好き』



あの文字を思い出す



「ウサギ、今日はカフェ寄らなくていいの?」



「うん、家でもできるし…」



「ウサギの夢って、なんなの?」



「オマエには教えない」



ずっと取りたかった資格があるって言ってた



ウサギは

真剣にがんばってる



私は

何もがんばってない



「誰かに言ったら
叶わなかった時、恥ずかしいじゃん」



「そぉ?」



私の夢は叶わないことばかりだよ



叶えようと努力してないって

またウサギに怒られそうだから

言わなかった



「あと、言ったらオマエに笑われそう」



「私に?
なに?そんな笑えるようなこと?」



「じゃあ、笑ったら
もぉ一生オマエと口きかない」



「うん、なんか…」



「もぉ笑ってんじゃん」



「だってウサギ、子供みたいなんだもん」



「子供の頃からの夢だから…」



「私のお菓子の当たりみたいなもんだね」



「まぁ、そんなカンジ」



ウサギが入れた偽物の当たりには

あれから触れてなかった



ウサギも何も言わないし



私の財布に本物の当たりと一緒に入ってる



「笑わないから、教えてよ」



「まぁ、いいや
笑ってくれよ
オレもオマエの夢バカにしたし…」



「でも、ウサギと口きけないのヤダ
だから意地でも笑わないから…」



そう言ったけど

ホントに笑っちゃったらどーしよって

ちょっと緊張した



「絶対笑わせる自信あるけど…

仕事にするのは難しいけど
オレ、パイロットの資格取ろうと思って…
個人で乗れるくらいの資格なら取れるかな…

オレの子供の頃からの夢
空を飛ぶこと」



「え…」



「え…
笑わないの?
こらえてる?」



「え…
凄すぎて、ビックリした」



「そんな反応?」



「うん、ウサギ凄いね!」



「え…なんか調子くるう」



「私も調子くるった
だってウサギ真剣だし
絶対取れる気するもん!

きっと
空飛べるよ!」



「オマエも空飛びたい?」



「え、私も?」



「うん
オレの夢、オマエにしか言ってないから…

てか、オマエにしか言えないわ
こんな恥ずかしいこと」



「恥ずかしくなんてないよ!
凄いよ!ウサギ」



「え…なんか…

もし叶ったら、オレの隣に乗る?」



「いいの?」



「オマエが乗りたかったら…」



「うん!
ウサギと一緒に空飛びたい!」



そう言ったあと

すぐに頭を過ぎったのは





その時

まだいるかな?



弾んだ気持ちが

ちょっと沈んだ



「え…
もしかして、ホントは乗りたくない?」



「んーん…乗りたいよ」



ウサギと一緒に空飛びたいよ



またウサギの隣にいたいとか

思ってる自分がいる



真剣に夢を叶えようとしてる

ウサギ



ウサギは私の夢を叶えようとしてくれてた



私は

ウサギのために

何かできるかな?



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