夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。

「ただいま」



ユメカが帰って来た



「おかえり」



1年ぶりなのに

普通すぎるだろ



「ウサギ、待ってた?」



「うん、待ってたよ」



先にユメカが

オレに触れた



バイト帰りの外灯の下

ユメカがゆっくり

オレに抱きついた



「温かい…

ウサギだ…」



「オマエ、待ち伏せとかすんなよ!
言ってくれたら迎え行ったし…」



「その言い方…ホントに、ウサギだ」



「風邪ひいたらどーすんだよ」



「ホントは、優しんだよね

ホントに、ウサギだ」



オレに抱きついて

ユメカは微笑んだ



外灯に青白く照らされるユメカの頬に

ゆっくり触れた



冷たかった頬が

すぐに温かくなった



「オレも…ユメカも…生きてる」



「うん…生きてるよ

ウサギに早く会いたかった」



ユメカを

思いきり抱きしめた



「ウサギ…待っててくれて、ありがと」



ユメカを待ってたこの1年



生きてたようで

生きてなかったみたいだった



ユメカが心配だった



ユメカの温もりのない日常で

ユメカを待ってた



< 143 / 155 >

この作品をシェア

pagetop